医療の現場において、患者の心の不調に対応するための看護ケアが重視されるようになっている。注意しながらケアを提供しなければ、個人のプライバシーに深く関わることも多く、トラブルに発展するケースも珍しくない。

看護する側とされる側との間で看護ケアに対する認識のズレが生じているのがトラブルに至る理由のひとつである。患者ごとに適切なケアの方法が異なる点が問題の改善を遅らせているのだ。

心の不調に対するケアの方法は、マニュアル化できるものではない。そのため、看護医療に従事する人の経験則に依る所が大きいのが実状である。

また、看護ケアの歴史が浅く、必要なデータが足りていないこともトラブルの頻発に繋がっている。そのため、心のケアのつもりで行ったことが患者のプライバシーを侵害していた、という事態に陥っているのだ。

看護ケアに起因するトラブルを防ぐには、医療従事者が看護ケアに対する認識を改めることが重要となる。心療内科など心の病の専門職に就いている人の指導を受けるほか、患者ひとりひとりの具合をよく観察したうえで接することが大切だろう。

また、プライバシーへの配慮も忘れてはならない。患者から見れば医療の専門家であっても、他人であることに変わりはない。自身のプライバシーに踏み込まれては迷惑に感じる患者もいることを忘れてはいけない。

看護ケアは医療の知識だけではなく、対人コミュニケーション能力の高さも必須な行為である。相手の心の不調への対処とプライバシーへの配慮を両立させることが正しいケアなのだ。